MRI検査に関するコラム

(10)耳の腫瘍におけるMRI検査

耳に発生する腫瘍には、色々な種類があります。

耳垢腺の腫瘍(耳垢腺腫、耳垢腺癌)以外はほとんどが皮膚に発生する腫瘍と同じ種類で、良性/悪性のものがあります。

その中でも、耳道内や鼓室胞に発生する腫瘍は発生部位や浸潤の程度などを評価する上でCTやMRI検査が非常に有用です。

悪性腫瘍は鼓室胞、脳神経、脳内へ浸潤することがあり、その場合は重篤な神経症状を伴います。

—犬猫の耳に発生する主な腫瘍—

良性:耳垢腺腫、ポリープ、乳頭腫、皮脂腺腫、基底細胞腫、組織球腫、形質細胞腫、線維腫など

悪性:耳垢腺癌、扁平上皮癌、中耳真珠腫(コレステアトーマ)未分化細胞癌、円形細胞腫瘍、メラノーマなど

<<症例>>

柴犬、10歳、オス

主訴:眼が揺れている(眼振)と首が左に傾いている(斜頚)

CT検査(血管造影) 左の鼓室胞の内部に腫瘤が発生し、周囲の骨が破壊されています

MRI検査(T2W=T2強調画像)-横断像- 正常な右側の鼓室胞とは違い、左側の鼓室胞内部は腫瘤で占められています

MRI検査(T2W=T2強調画像)-矢状断像-

本症例は、MRI画像からは脳の異常は無く、浸潤性の強い耳道腫瘍が診断されました。鼓室胞周囲には平衡感覚を司る神経も走行しているため、その脳神経に腫瘍が浸潤し、今回のような症状が出てしまったようです。

耳道の腫瘍は外科手術によって完全切除できるものもあれば、浸潤が強いものでは切除しきれない場合もあります。その場合は放射線治療を組み合わせたりすることで良好な経過を得ることができます。