MRI検査に関するコラム

(5)線維軟骨塞栓症(FCE)におけるMRI検査

線維軟骨塞栓症(FCE)とは、脊髄の血管に微細な軟骨などが詰まって血流を阻害することで、脊髄の壊死や変性が起こる疾患です。散歩や激しい運動などの途中や終了後に発症することが多く、急に歩行が異常になったり四肢の麻痺(多くは片側性)が生じます。

発症時のみ痛みが出ることがありますが、その後は痛みは無く、歩行異常や麻痺症状だけが継続します。血流障害が原因なので手術は必要ありません。梗塞部位や重症度によりますが、大抵は数週間~数ヵ月ほどで無治療で症状が改善します。急性の発症や症状が類似している疾患として椎間板ヘルニアがあり、ヘルニアの重症例では外科手術が必要なので両者をしっかり鑑別することが重要です。

CT検査や脊髄造影だけでなく、更にMRI検査も合わせて実施することで正しい診断を下せることができます。

<<症例>>

パグ、7歳、去勢オス

主訴:前日の夜から急に後ろ足が立たない。夜間救急にてヘルニアと仮診断。

<MRI検査 T2W(T2強調画像) -矢状断像->

T13部分の脊髄実質の高信号領域(○)が認められる。頭側2つ分の椎間板髄核(↑)が低信号を示しています

<脊髄造影CT検査  -矢状断像->

数ヵ所で軽度の圧迫はあるものの、椎間板物質の逸脱による明らかな脊髄の圧迫所見は見られません

<MRI検査 T2W(T2強調画像) -横断像->

脊髄実質の右側領域が高信号を示しています

<脊髄造影CT検査  -横断像->

腹側の造影剤の流れは少し悪いものの、脊髄の圧迫は軽度しか見られません

発症翌日の当院への来院時には痛みの症状はほとんど見られず、右後肢の麻痺が認められました。診断後は抗炎症作用のあるサプリメントと運動制限による内科治療のみで徐々に回復していきました。